高松高等裁判所 平成10年(ネ)13号 判決 1998年6月01日
控訴人(原告) 高知県信用保証協会
右代表者理事 A
右訴訟代理人弁護士 田村裕
参田敦
被控訴人(被告) Y1
被控訴人(被告) Y2
主文
一 原判決を取り消す。
二 控訴人と被控訴人らとの間の昭和五八年五月二八日付連帯保証契約(主債務は控訴人とBとの間の同日付信用保証委託契約に基づく債務)に基づいて、被控訴人らが控訴人に対し、連帯して金一九二万二七四七円及びうち金五九万一四〇〇円に対する平成九年一一月一日から支払済みまで年一二パーセントの割合による金員を支払う義務があることを確認する。
三 控訴人と被控訴人らとの間の昭和五九年一一月一三日付連帯保証契約(主債務は控訴人とBとの間の同日付信用保証委託契約に基づく債務)に基づいて、被控訴人らが控訴人に対し、連帯して金五〇六万六八一一円及びうち金一四七万七一四二円に対する平成九年一一月一日から支払済みまで年一二パーセントの割合による金員を支払う義務があることを確認する。
四 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。
事実及び理由
第一控訴の趣旨
主文同旨。
第二事案の概要
原判決の「事実及び理由」欄二及び三に記載のとおりであるから、これを引用する。
第三当裁判所の判断
一1 当裁判所は、本訴請求は訴えの利益を欠くものであって、不適法であるとして却下した原判決は、以下の理由により相当でないと判断する。なお、控訴人主張の請求原因事実は、被控訴人Y1との間では争いがなく、被控訴人Y2との間では争いがないものとみなされる。
本件記録によれば、控訴人は、被控訴人ら連帯保証にかかる主債務者Bは、現在、頭部の病気のため身体障害者療養施設に入所中であり、寝たきりで話せない、字もかけない状況にあり、意思能力・訴訟能力を欠いている可能性が極めて高く、主債務者に対する請求をなすことは事実上不可能であり、財産もなく無資力のため強制執行も不可能であることから、確定判決に表示された同人に対する求償債権の消滅時効中断のために、本訴請求に至ったというのである。
しかして、その趣旨は、右求償債権の消滅時効を中断することにより、被控訴人らが同消滅時効を援用し、その連帯保証債務の支払い義務を免れることを未然に防止し、併せて、被控訴人らの消滅時効の進行を中断するためになされたものであることが、優に推認されるというべきである。
してみれば、本件事案において、本訴請求が訴えの利益を欠くものということはできず、原判決が本訴請求の必要性を排斥するに当たり指摘している被控訴人らが控訴人に対し、最近まで連帯保証債務の一部弁済をしてきたという事情は、右認定を左右する事情たりえないというべきである。
2 したがって、本件訴えを不適法として却下した原判決は失当であるから、取り消すこととするが、本件は当事者間で事実関係に争いがない場合であるから、同法三〇七条ただし書により、本件を第一審裁判所に差し戻すことなく当審において直ちに実体判決することとする。
3 以上によれば、控訴人の本訴請求は理由があるから、これを認容すべきである。
二 よって、本件控訴は理由があるから、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 山脇正道 裁判官 高橋正 村上亮二)